第14話 気管支喘息の新しい検査
一般的に気管支喘息の診断は特徴的な症状によることが多い。すなわち、@息苦しさ(呼吸困難)が発作的に起こる。A特に息を吐くときに喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)を伴う。Bこのような気管支の閉塞(気流制限)による症状は、自然にあるいは治療によって改善する。喘息発作時の診察ではこのような特徴的な自覚症状と診察所見で呼吸音の異常(息を吐くときの時間の延長やラ音という異常音)によって気管支喘息の診断は比較的に簡単です。
ところが、気管支喘息の非発作時や喘鳴(ゼイゼイ)の無い咳だけが主症状の咳(異型)喘息では、喘息特有な症状が無いことが多いため呼吸器科医にとっても診断は難しいことがあります。「咳喘息」という概念が一般化するにつれて「咳喘息」の診断が安易になされているような感じがします。このような場合、病歴(呼吸困難発作の状況、アトピー素因の有無、喘息やアレルギー疾患の家族歴など)、肺機能検査(肺活量測定)、血液や痰の中の好酸球(白血球の1種で喘息などのアレルギー疾患で増加します)の測定、気道過敏性検査などの検査を参考にします。これらの検査は血液中の好酸球数測定を除けばいずれも専門的であり簡単ではありません。
気管支喘息の基本的な病態は、以前は気管支(平滑筋)の発作的な攣縮(けいれん)と考えられていましたが、最近では、より大切な所見として気道過敏性と気道炎症(特に好酸球性炎症)であることがわかってきました。気道過敏性とは気管支粘膜がいろいろな気管支収縮刺激に対して敏感になった状態であり、この検査としてはメサコリンやヒスタミンなどの気管支収縮物質を低濃度から吸入させて気道抵抗を測定するといった検査法がありますが、高額な検査機器を必要とし、その検査によって気管支喘息発作を誘発することがあるので大学病院など一部の専門病院でしか行われていません。気道過敏性があることを疑わせる所見としては、朝起床時の冷気吸入、揮発性ガス吸入、運動によって咳や喘鳴がおこるなどがあります。
気道炎症の検査法として最近注目されているのが呼気中一酸化窒素(FeNO)測定です。呼気中のNO(一酸化窒素)は喘息による好酸球性気道炎症のバイオマーカーとされます、すなわち気管支喘息の重要な病態である気道炎症の強さの指標となります。これを測定することによって気管支喘息か否かの診断や気管支喘息の病勢の評価(治療効果の判定)の手助けになります。検査自体は息を吸ってゆっくり吐くだけの苦痛を伴わない簡単な検査ですが、NOという微量な物質を測定しますので正確に測定するためには測定環境や測定時の条件が必要です。すなわち石油ストーブを暖房に使っている部屋や車(特にディーゼル車)の排気ガスが入ってくるような部屋での測定ではNO値が高値になります。ウイルス性気道感染症(インフルエンザなど)、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、硝酸塩が豊富な食べ物(レタス、ホウレン草など)を食べた後、気管支拡張剤使用時ではNO値は増加します。逆に運動、飲酒、喫煙後1時間以内、吸入ステロイド使用後などでNO値は低下 します。 FeNO値の解釈は、25未満(小児の場合20ppb未満)の場合は気管支喘息の可能性は低く、50ppb(小児の場合35ppb)を超える場合は気管支喘息である可能性が高い。25ppbから50ppbの間である場合はその他の臨床所見を参考にして慎重に判断します。
〒867-0023
熊本県水俣市南福寺3−1
TEL 0966-62-0707
診察時間
平日
AM 8:30~12:30
(受付12:00まで)
PM 1:30~6:00
(受付5:30まで)
土曜日
AM8:30〜12:00
(受付11:30まで)