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市川院長の『病気の話』Blog

話題の病気

第9 肺炎球菌ワクチンについて
(知っていますか?肺炎球菌ワクチンには2種類あります)

肺炎球菌ワクチンの基礎知識

 肺炎球菌ワクチンはすべての肺炎に対して予防効果を示すわけではありません。肺炎球菌ワクチンは、肺炎全体を予防する効果があると誤解されている場合があります。肺炎球菌による肺炎は肺炎全体の約半数(50%)程度とされています。肺炎球菌ワクチンはこの肺炎球菌による肺炎の予防効果があります。肺炎球菌ワクチンには2種類の製剤があり、それぞれに特徴があることが、一般の人はもとより医療関係者にも、よく理解されていないのが現状です。

肺炎球菌とは

 肺炎球菌は小児では、髄膜炎などの中枢神経感染症、菌血症、中耳炎や副鼻腔炎など主に上気道炎の原因として重要です。一方、成人では肺炎、気管支炎など下気道感染症の原因菌として重要です。

肺炎とは

 肺炎は高齢者の死亡原因として重要です。肺炎球菌による肺炎は肺炎全体の約50%程度を占めます。肺炎球菌は毒性が強いのでしばしば死に至る重症肺炎(侵襲性肺炎球菌性肺炎)を引き起こします。

どんな人が肺炎になりやすいか(肺炎リスクが高い人とは)

 高齢者、とくに@タバコを吸う人、Aアルコールをたくさん飲む人、B肺気腫など慢性閉塞性肺疾患(COPD)の人、C糖尿病、心臓病、慢性肝臓病、慢性腎臓病などで治療中の人、D癌治療中や膠原病治療中など免疫不全状態が考えられる人などです。

肺炎の予防

 これらの肺炎になりやすい人は日ごろから予防を心がける必要があります。肺炎予防には、@生活習慣の適正化(禁煙、節酒など)と栄養状態の改善、A基礎疾患(心臓病、COPD,糖尿病、肝臓病、腎臓病など)の治療、B口腔ケア(日頃の歯磨きや歯周病の予防・治療)、Cワクチン接種が大切です。

ワクチン接種による肺炎予防

 高齢者の肺炎予防には、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンのどちらも接種することが重要です。

 肺炎球菌ワクチンには23価多糖体ワクチン(PPSV23)と13価蛋白結合型ワクチン(PCV13)の2種類があり、それぞれに異なる特徴を有します。

 23価ワクチン(商品名:ニューモバックスNP)は23種類の莢膜多糖体抗原を含むことでより広範な血清型をカバーします。一方でB細胞を介した免疫応答が主でありワクチンの効果には個人差があり、持続性に問題(およそ5年で抗体価が減弱する)があり、5年毎の投与が推奨されます。このワクチンは65歳以上の高齢者を対象に5歳刻みで公費助成が受けられます。自治体によって公費負担の割合は差がありますが、水俣、芦北では自己負担額2.600円です。

 13価蛋白結合型ワクチン(商品名:プレベナー13)は、B細胞だけではなく、T細胞を介した高い免疫応答と免疫記憶をもたらし、強い持続性の確実な免疫応答を示します。したがって特に高齢者では一生に1回の投与で良いと考えられています。しかし、このワクチンは現在のところ公費助成の対象ではありませんので約13,000円程度の費用がかかります。小児の定期接種である肺炎球菌ワクチンはこのワクチンです。

 2種類の肺炎球菌ワクチンを組み合わせて投与することが望ましい

 呼吸器学会や感染症学会ではとくに肺炎リスクが高い人にはこの2種類の肺炎球菌ワクチンを組み合わせて投与することを推奨しています。

 肺炎リスクが高い人にはPCV13(プレベナー)をまず接種し、その後6か月から4年以内にPPSV(ニューモバックス)を接種する。定期接種年齢であればPPSV(ニューモバックス)を接種し1年後にPCV13(プレベナー)を接種する。これ以外に患者さんの状態に応じて幾つかの方法が推奨されますが、いずれにせよ、この2種類のワクチンを組み合わせて接種することが肺炎予防には重要です。