第1話 咳の話
「咳がとまらない」と訴えて内科・呼吸器科・耳鼻科を訪れる人はかなり多いのが現状です。「咳がとまらない」すなわち、咳の持続あるいは慢性咳とは細かい医学的定義は別として咳が3,4週間以上続く場合です。普通のかぜに伴う気管支炎など急性呼吸器感染症でも2週間ほど咳が治らないことはよくあります。
気道とは気管支(呼吸における空気の通り道)のことです。一本の気管から始まり次々と2つに枝分かれ(分岐)しながら、だんだん細くなり十数回分かれると肺胞(ガス交換をする場所)になります。気管支には気管支平滑筋という筋肉が内腔を取り巻いていて、この気管支平滑筋が色々な刺激に反応して収縮することが「咳」のメカニズムです。咳はいろんな気道刺激因子(たとえば、かぜなどの気道炎症、吸気の温度変化・冷気吸入、ほこり、揮発性のガス吸入、大声を出したり笑ったりすること、運動、胡椒等に含まれるカプサイシンなど)で起る気管支の筋肉の収縮による生体防御反応です。本来は咳は異物除去目的の生体防御反応ですが、激しい咳が続くことにより眠れない、胸が痛い、痰に血が混じる、息苦しい、体力が消耗するなど様々な悪影響を及ぼします。慢性持続性の咳の発生メカニズムとして大切なのが「気道過敏性」です。
気道過敏性とは、その気管支収縮の反応閾値が下がりいろんな刺激で簡単に気管支収縮がおこりやすくなっている状態ということができます。気道過敏性があるかないかを検査することができます。気管支収縮作用のある薬を薄い濃度からだんだん濃くしていって、それを吸入して気道抵抗(気管支収縮の程度)をみる検査です。気道が過敏な人では、薄い濃度の薬の吸入でも気道抵抗が増加したり咳や喘息発作がおこったりします。しかし、このような難しい検査をしなくても朝夕に鼻水や咳がでる、酢の物や胡椒を食べた時に咳が出る、走ると咳がとまらなくなる等の症状は気道過敏性がある可能性を示すサインです。
この気道過敏性は気管支喘息の基本的な病態のひとつです。
通常の喘息では喘鳴(ゼーゼ―、ヒューヒユ―)や呼吸困難(息苦しさ)が発作的にみられますが、そういう症状のない咳だけを主な症状とする異型(変わった)喘息です。症状はちがいますが同じ病気(喘息)と考えられます。したがって普通の鎮咳薬(咳止め)はあまり効果はなく喘息の薬が有効であることが多いのです。 インフルエンザ、マイコプラズマ感染症などの「かぜ」の後に咳だけがとれないということはしばしばみられます。これは「かぜ」の後に一時的に気管支が敏感になった状態(気道過敏性)が原因と考えられます。
ながびく咳・・・重大な気管支や肺の病気が隠れていることがあります。安易な自己判断は禁物です。専門医の診察を受けましよう
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